地元のおすすめを聞かれて答えられなかった話

地方出身と述べると地元のいいところを聞かれることがある。

好きなところ、名所、特産物、、考えればいくつか挙げられると思う。

 

が、唐突に聞かれたとき、しかも少しかしこまった場であるとまた違った。少なくとも私は違っていた。

地元を紹介してくれなどと言われたとて、私からしたらそんなものはない。

地元というワードだけで一気に脳が働くことをやめ、当時の解像度の低い生活だけが思い出されるだけだ。逃げ場のない狭いコミュニティによる見えない抑圧に日々肩身の狭い生活をし、神経は尖り、すべてが敵だと思っていたあの環境の”いいところ”なんて、ある程度時間をかけてそれっぽいことを述べて「いいとこえろだね~」で終わるのが最適解なのに。

有名な自然物は華やかさを失い、”ただ”あるようなところしかないような場所で、まあそれでも有名な特徴を述べればよかったのだが、その質問を受けたときの私には地元=にはならず、ただただ何か絞り出せないかと思考をめぐらせるしかなかった。

考えれば考えるほどマイナスなものに引っ張られ、名所らしいものを思い出せない。

少しの間がある中で何とか絞り出したのが、私視点で地元の誇れる唯一の居酒屋だった。なんとかその居酒屋のいいところを述べるも天命が思い出せない。

魅力を十分に伝えることもできず上っ面の情報を時間をかけて説明したのち、オチも作れず微妙な着地で終わった。

 

相手からの返答は、「うーん、そうきたか。質問をかえますね」だった。